おろかな睡眠不足

好きな漫画やアニメやゲームの感想だったり推薦だったりを語彙力なく語ります

『魔法少女なんてもういいですから。』が終わった

更新分を終わってしまうショックで鬱々と読んだら単行本に救われました。神も魔法少女もいた。嬉しい!

魔法少女なんてもういいですから。(1) (アース・スターコミックス)
 

 

(とくにないあらすじ:主人公のゆずかは、ある日ゴミ捨て場に転がる謎の生き物を発見します。謎の生き物は『ミトン』と名乗り、自分を見ることができるゆずかには魔法少女の才能がある!と契約を持ちかけてきました。一切のデメリットもすることもなく、ただの記念…しないとソン…ということで、試しに契約したゆずかは、魔法少女としての水着のコスチュームに強制着替えをさせられて生ゴミくさいミトンをぶん投げます。セクハラですね!)

 

作品について

双見酔作『魔法少女なんてもういいですから。』はコミックアーススターで連載されていた、タイトルにある通り魔法少女魔法少女をしない漫画でした。どういうこっちゃの理由は以降で。ちょうど先日最終巻が発売されて、三年の連載に幕が閉じたとのことです。寂しい限りですがとても好みの漫画でした。発売が待ちきれなかった三巻でまさか終わってしまうなんて打ち切りめったなことは言ってはいけない

やわらかい絵柄に、無闇な勢いがあるわけでもなく、ほんわかほのぼのとした雰囲気の中繰り広げられるシュールな攻防と舌戦、アクセントのような不可思議要素とツッコミどころ。考えさせられることもあればひたすらにイラっとさせられたり。

カテゴライズが難しい不思議な作品だと思います。双見先生の作品はこれが初めてで、他の作品はまだ存じないのですが、結構独特な作風ではないでしょうか…?…これも一つのノーイベント・グッドライフ…なのだろうか…いやイベントは多いな。

 

この作品の舞台は、魔法少女とその敵が壮絶な戦いを【終えた】、その後の世界になります。まどマギ」とか「まほいく」とかそういう観念は捨て置いてください。やめろみせるな。ごたごたが終わった【後】です。兎にも角にも何もなく、何も起こらず、平和な世の中で、魔法少女。そう、この作品において魔法少女という存在の必要性は一切ありません。本当にない。フリとかじゃなくマジでないからすごいんですよね…会話のネタくらいにしかならないし、寧ろいらないもの扱い。「もういいですから」。

そんな世界で魔法少女となった一人、まともなようでどこかねじの抜けた…ハマりすぎた…?不憫な主人公のゆずかと、彼女を過保護に守るバイオレンス友人のちや、彼女に対してろくなことを言わないミトンの殺伐とした(主にミトンが生命の危機を感じる)関係を楽しむお話です。たわしで背中を削られたりクーラーボックスに閉じ込められて酸欠になりかけたりetcetc。ミトンが。

ゆずこがミトンをペットとして扱おうとして、しかしペット=家族になることを絶望した顔で拒否るんですよ、最終巻で。基本ミトンが不遇な目に遭う時はミトンが悪いんですけども。

あと私が好んでいる時点で大体あれですが女の子達のお話です。女の子と女の子が仲良くします。いいですね…。

 

キャラクターについて

登場するキャラクター大体性格か行動のどこかしらに難があるのが本当にひどい。そこがいいんですけど。以下、メイン三人について。

  • 主人公であるゆずかは人当たりのいい優しい女の子ですが、思ったことはっきり言うし結構辛辣です。その辛辣の対象はもっぱらミトンなのですが。彼女の不幸はミトンに出会ってしまったことであり、彼女の幸福はミトンと出会ってしまったことだったと思います。何故か機械並みに時間に正確で、規則正しい生活を一切怠らない超人みたいな生活を送っています。それ故にミトンからは悪気なくモデルハウスみたいな優等生とか呼ばれたり。人当たりの良さ故にちやしか深く付き合う友達がいないのが唯一の弱点ですね。
  • ミトンはゆずかに契約をもちかけたマスコットです。デリカシーのごっそり欠けた*1人間社会で間違いなくハブられるだろうとんでもない性格をしており、作中キャラから一度も同情をされず貸しを作ることも拒否される類まれなるウザさの持ち主です。一言多い。大体その一言のせいでろくな目に合わない。ウザいなあ、って思うんですけど癖になるんですよね。こいつ何なんだろうね。
  • ちやはゆずかの唯一の友人で、またゆずかが唯一の友人というやべー女です。当然のごとくゆずかが大好きで、彼女に対してあだなすミトンへ容赦がありません。ゆずかが対処しきれないミトンへの制裁を行う係です。口を開けば他人の神経を逆なでし、自覚のないセクハラを行うミトンを毛嫌いしています。…いや嫌うよな普通。ちや程でなくてもゆずかも拒否の意思は示しているけれど、くそポジティブなミトンにそんなものは通用しない。ミトンを見ることが出来る魔法少女の才能を持っているけれど、魔法少女にはならないとして、ゆずかを見守る立場を選びます。

 

真面目なストーリーとしては、この三人に、先輩であるところの真冬と相方の男爵 ポチ君、先輩で『引退』したすずこさんが関わることで、魔法少女になった意味や魔法少女として残せるもの、を普段の日常を通しながら考えたりします。魔法少女に意味がないからこそ、そこに何かが残る。ちょっとセンチメンタルな気持ちになるような良いお話も多いんです。ミトンだって時々はまともなことを言うし。時々は。

個人的には真冬とポチ君の関係性が好きでした。いや比較対象がミトンの組んでいる魔法少女しかいないので必然と言えば必然なんですがね。この二人のコンビ、って感じ、非常に可愛いんですよ。部屋片づけろよ。二巻の終わりにしゅんとして続きのweb連載読んだら度肝抜かれたし幸せハッピーでした!ポチ君かわいいなあー!いていいんだよー!

 

始終、ゆずかは変身することを嫌います。だって必要性がないし、そもそも衣装が水着なんて恥ずかしいことこの上ない。けれど魔法少女は日常生活を送るのに何かと便利とミトンは変身を迫っては拒絶されます。確かに便利だけれどそれ迫るのはね…だからセクハラって言われるんだお前は。というか魔法少女になったせいでストレスの塊みたいなミトンとの同居を余儀なくされるし。「魔法少女なんてもういいですから。」は、そんなゆずこの気持ちがよく現れたタイトルで、…しかし最終話では…?ぜひ読んでもらえればと思います。

 

本当に作者さんも言ってるけど「いつでも終わらせられる」作品だったので、もう少し続けてほしかった所はあります。でもここが引き際ならそういうものなんだと受け入れ…受け…受け入れられるかー!徹夜で読み返しじゃー!!!

 

以上、ちょっと真面目に宣伝。でも満足の単行本でした。

 

 

魔法少女なんてもういいですから。1&2パック(Blu-ray Disc)

アニメは知らないうちに始まって知らないうちに終わってて死ぬほどびっくりしました。いつの間に。今度レンタルしてみよう…

 

 

*1:特にセクハラをセクハラと認識していない点がゆずかが嫌悪する所以(そもそも性的観念を持っていない節がある)