おろかな睡眠不足

好きな漫画やアニメやゲームの感想だったり推薦だったりを語彙力なく語ります

『暁のヨナ』面白過ぎない…?

最近ずっと(二月の頭から)白泉社の「マンガPark」というアプリで白泉社の漫画を読んでいます。白泉社は明らかに少女漫画にしては一風変わってる少女漫画を多く連載している、『花とゆめ』や『LaLa』などの雑誌を刊行していることで有名とは思いますが*1、そもそも私の部屋に絶滅危惧種みたいに存在している少女漫画は全部白泉社でした。

会長はメイド様!」「王子と魔女と姫君と」「水玉ハニーボーイ」…全部主人公の女子がカッコいいんですよね~!多分そういう、『人様の手を多く取らず自立を目指すようなしっかりした主人公』な作品が少女漫画では特に好きで、白泉社系は甘えるヒロインみたいな基本王道は行かないのでそういうのが多めだったんですよ。むしろどっかおかしいのが多い。褒めてる。

で。『嘘解きレトリック』*2の無料分に追いついてしまったので、まあ何か他を…と思って選んでみたのが『暁のヨナ』でした。

正直そう期待はしていなかったというか、まあなんかどうせひ弱な主人公が無駄にイケメン侍らせてる感じのあれやろ…(笑)みたいな嘲笑全開で読み始めて三日目くらいで悟りました。「これ、ハチャメチャ面白いやつでは…?」

 

www.hanayume.com

 (書くことをためらうあらすじ:全部読んでないのでそんな詳しくない)

 

草凪みずほ作『暁のヨナ』は、花とゆめで連載中の少女漫画です。主人公のヨナは「高華王国」の姫君。平和主義の国王を父に持ち、護衛のハクと従兄で片思い相手のスウォンと共に迎えた16歳の日、王位簒奪を目論んだスウォンの手によって父親が殺害されてしまいます。反逆により城を追われることになったヨナはハクと共に仲間を探しながら命がけで逃げる中、徐々に高華王国の実情と向き合うことになります。

 

主人公は国に伝わる伝説の「緋龍王」の生まれ変わりと目される、元姫様のヨナ。華奢で無知だったお姫様が過酷な運命を乗り越え生まれるその成長ぶりこそが、なにより、私をこの作品の虜にする一番の要因でしょう。もう本当に本当にヨナちゃんかっこよ過ぎなんですよ…!沢山の恐怖や混乱や後悔に揺さぶられ、ハクがいなかったら今にも折れそうだった女の子が、仲間に支えられ世界を知る中で、どんどん前へ前へと歩み始める。

自分の出来ることを、自分がやらなければいけないことを。貪欲なまでに手を伸ばし続ける意思を宿したその瞳の輝きは、小娘と侮る敵を威圧し、仲間を鼓舞する圧倒的なカリスマの発露。追われる身であろうとも、彼女はどこまでも王位に連なるものであり、その覚悟と宿命は永遠なのだと思わされます。

その一方で時折見せる昔と変わらない幼い表情や、無邪気な言葉、ふと気づいてしまったハクへの胸の高鳴りなどに振り回される年相応な様子も愛らしくて頭おかしくなる。あんな鋭いまなざしで弓矢をいった女の子がこんなかわいいわけあるの?まああるんですよね~~~~!!!!!!!!!ヨナちゃんは立ち上がれてしまう強さを得てしまったので…それがどれほどハクの胃を痛めているのか…。

 

「緋龍王」たる彼女の下に集う「四龍」や仲間達もまた、そんな無敵に素敵なヒロインヨナに惹かれていくメンバーです。この作品、登場する主要キャラがことごとく魅力的というとんでもない罠があるんですけれど(マジでずるい)、仲間たる彼らもその例外ではありません。事情を抱えながらその血の下――あるいは思う所あって――共に旅をすることを決めた仲間たち。シリアスもギャクもこなしてしまう圧倒的応用力で不思議な絆で結ばれたメンバー。人外としておそれられる彼らを、時に至極真面目に「暗黒龍とゆかいな腹ヘリ達」にまとめあげちゃうの、もう笑うしかない。なんだかんだでジェハ一番苦労してないか?温泉回大好き。

 

ヨナが紅一点、パーティはおおむね男所帯なわけですが、お母さんユンの下、彼らの生活は和気藹々つつがなく進行しており、それにまつわる日常回も面白いです。誰もかれもがヨナに惹かれたりそうでなかったりな表層化しきらない僅かな不安定さを抱えつつ、各々が各々の距離感を探りながらのどんちゃん騒ぎやトラブルやら。ここ、ホントに一言で表し切れない人間関係がいいんですよ…。憎からず好ましく、だからこそ触れ難い。

故にそういった感情が浮き彫りになりがちなメイン回もまた好きですが…えっ全部好き?

 

そしてそんな複雑人間関係の最上位に位置してるといってもいいのが、すべての始まりである幼馴染たち、「ヨナ・ハク・スウォン」の三角関係でもうこれが本当にどうしようもないくらいねじ切れてて大好きを百万回叫んでしまう。

ヨナはスウォンが好きでハクとは仲良し。ハクはヨナが好きだけどスウォンという親友のことも大切だから二人を見守りたい。スウォンもまた、ハクのことを信頼しヨナのことは悪く思っておらずむしろ――優しく成り立っていたそんな三角関係は、スウォンの裏切りによりあっけなく崩壊する。大切な父上を、尊敬する国王を失ったヨナとハクの感情はそれぞれ悲哀と憎悪に振りきれる。しかし話が進む中でスウォンの裏切りはその正当性を持ち合わせていたのだ――ということをヨナたちは徐々に知っていくわけです。それぞれ旅路の中成長する中でもスウォンのことを振りきれないヨナとハク、同じように二人のこととなるとその聡明さに陰りが生まれるスウォン。

例えば道端のほんの数瞬。例えば町のほんの向こう側。すれ違いのなかでさえ過ごした日々は相手の行動を無条件に信頼してしまうし、かつての暖かな思い出は容赦なく今を鈍らせる。裏切りにままならない怒りの感情は確かにあるのに、状況が、時が、自分が。それを晴らせないまま、許せないまま進む中で――どうしようもないくらい、途切れない絆を見つけてしまう。あれを見れば誰にだってわかる、ああ、あの日から――運命が廻りだしたあの日から、彼らは本当の意味ではずっと進めていないのだ。焼き付いた過去があまりにも幸福で鮮烈で、だから…。砦での一件、あの連携が『出来てしまった』こと、ヨナの涙があまりにも印象的で、え~~~~~~~~~好きすぎるだが…?になってしまった。何でこの作品今まで知らなかったの?信じられない…。

番外編で過去を知るほど、本編で今を知るほど。「どうして」という言葉がとめどなく溢れてくるような三人ですマジで…。どうしてこうなってしまったのか。なんて、分かりきったことを何度も見直してしまう。時計の針が戻らないことなんて知っている、もうあの日が帰ってこないことは分かっている。それでも、だとしても、いつかまた、三人がなんの壁もなく和気藹々と話せる時が来たのなら――と。絶対にないことを願ってやまない、そんな読者になってしまいました。この三人の間にわだかまった業を許すな。ヨナちゃんにこれ以上悲しい顔をさすな。ハクとヨナの不器用すぎて外野がキレそうになる甘酸っぱい二人きりの空間をビデオレターにとって陛下に送れ。ウオーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!!どうしてなんだどうしてそれしか選べなかったんだよスウォン~~~~~~~~~~~~~~!!!!!(半ギレ)

 

進行形で読んでるため半ば慟哭になってしまった。今123話なので続きが楽しみです、なんかこう…みんなも読んでも楽しいかもだぞ!暁のヨナ!私は楽しい!良ければ読もう!

 

以上!

*1:えっ有名じゃない…?

*2:この作品もすごく面白い。こっちも不遇な主人公がへっぽこだけどここぞを決める探偵と共に見失いかけていた『自分』を見つけていく作品で好きになるテイストです…