リゼたんが永遠にかわいいしリゼたんしか勝たん。
(天から聞こえるあらすじ:王太子であるジークヴァルトの目下の悩みは婚約者のリーゼロッテ。彼女の威圧的なふるまい、その真意がつかめず困惑しきりのジークの耳にある日届いたのは――『ツンが強い!ツンが強いぞリーゼロッテ!』なんと神の【実況解説】だった!実況解説を手助けに一歩ずつ婚約者と通じ合い始めるジーク、しかし様々なイベントが彼を待ち受けていて…)
作品について
恵ノ島すず作「ツンデレ悪役令嬢リーゼロッテと実況の遠藤くんと解説の小林さん」はカドカワBOOKSから発売されているノベルであり、今回は逆木ルミヲ先生の作画で行われているコミカライズ版に言及します。
コミカライズ版「ツンデレ悪役令嬢リーゼロッテと実況の遠藤くんと解説の小林さん」は、B’s-LOG COMICSから発売されているコミックスです。
今作はなろう発の、所謂ところの「悪役令嬢モノ」に少々ひねりを加えた作品になります。
「悪役令嬢」は乙女ゲームなどで主人公のライバルとして現れる、「主人公に意地悪をする対抗馬の女の子」のこと。王国などが舞台だと特にその肩書が令嬢であることが多く、一般的にそういった呼ばれ方をされます。
主人公の恋路をあらゆる卑怯な手段を使って阻み、最後は主人公を選んだ攻略対象のイケメンによってその行いを処罰される…、という、ゲーム特有のあるある!なテンプレートな展開を利用し、「悪役令嬢になってしまったので処罰されないように逃げ回る」、「開き直って悪役令嬢らしくなる」、「悪役令嬢と友達になったから彼女を助ける」…など、悪役令嬢の概念を主軸に展開される物語のことを「悪役令嬢モノ」と呼びます。*1
ヒロインであるリーゼロッテは、そんな悪役令嬢の一人として描写されています。とはいえ、その肩書は彼女には本来そぐわないものなのです。
根は優しいにもかかわらず、善意や気遣いが強情な態度のせいでうまく出力されず、歪んで伝わってしまうが故のものだから。しかし、気高い彼女はわざわざ「優しくしていますよ」なんて言えやしない。そんな素直じゃない、ツンデレ態度を見抜けず翻弄されているのは同じ学園に通う平民のフィーネもしかり、そして、彼女の婚約者であるジークヴァルトもしかり。彼女の本心を察することが難しいが故に、すれ違い始めている婚約者同士の好意…。
ある日。そんなわだかまった現状を打破するように聞こえた、ジークにだけ聞こえる天の声。
神の信託、それこそが――「実況の遠藤くんと解説の小林さん」の声だったのだ!
内容について
『マジカルに恋して』。通称「まじこい」、とある女性向け恋愛シミュレーションゲームのタイトルです。
ある日の高校の放送室。熱狂的なファンの小林さんにオススメされた遠藤くんはその内容に触れることになりますが、なんと逆ハールート*2以外で基本誰かが死ぬ上、小林さんオススメキャラの『リーゼロッテ』が必ずといっていい程たどる破滅しかない最悪の運命にあらすじだけで思わず絶望する羽目に。人の心がないハッピーエンドアンチ設計ゲーム、しんどいisしんどい。
そんなヤバイゲームを遊ぶのは…と躊躇う遠藤くんに、小林さんは「じゃあ実況して遊ぼうよ!私解説するからさ!」とゴリ押しの提案をして可決。
二人は早速ゲームを遊び始めるわけですが、なんとそのガヤの声が、作中キャラの『ジーク』に届いていしまう。二人の意図しない干渉によって、ゲームはどんどん本来のルートから外れていきます。クイックセーブしかできないために不可逆となった謎の乙女ゲーム。小林さんと遠藤くんの二人は、自分たちの実況解説で、リーゼロッテを救う事を――このゲームを最高を超えた最高のハッピーエンドに導くことを決めます。
使える武器は小林さんが持つ「本来のゲームのシナリオの知識」と、二人の機転のみ。どんどん本来の筋道からずれていく物語、本来のゲームとは異なるが故の様々な違和感、そもそもどんな意図で、どんなカラクリでこんなことが起きているのか…。現実世界の小林さんと遠藤くんの関係性も含め、明かされない多くの謎を抱えながら。有識者が俯瞰な立ち位置から進む波乱万丈な未知の乙女ゲーム物語がここに開幕します。
好きなところ
…とは言ったものの、この作品の本質はここにあらず。最初に「少々ひねりを加えたもの」と書きましたが、そんな悪役令嬢・リーゼロッテの描写こそ、この作品の最高なところだと信じて疑いません。
リゼたんが…可愛いッ…!!!!!!!!
小林さんがリーゼロッテを「リゼたん」と呼ぶので読者側も釣られがちですが、いやでもリゼたんがかわい~~~~~~!!!!!なんですよ…マジで…。
好きな人を大切にするリゼたんは、いっっつも貴族らしいキツイ態度でツンツンしながらデレッデレしてます。典型的なツンデレですね。問題はそれが周囲のごく親しい人物以外に伝わっていなかったことなのですが、ジークの下に届く「実況解説」がそんなジレンマを打破します。
キツイ口調は照れ隠し、強引な態度は思いやり。いつもジークのことを考えては恋焦がれ、平民がゆえに苦労するフィーネの為にあれやこれや手を尽くす…。気遣いも気苦労も一切見せないからこその彼女の気高さ、しかし「神」な二人がいるために、教えてもらったジークによってあっけなく暴かれてしまうその本心。動揺で顔を真っ赤にするリゼたんの可愛さ、たまらず悶絶するジーク、バレバレなのに尚もごまかそうとするリゼたん、もう再起不能なくらいに可愛さにしんどくなって真顔になるジーク…。
二人の無限イチャイチャを、これでもか!と最強にコミカルかつ美麗に描写する逆木先生の画力によって、もう、一ページごとに読んでいるこっちも身もだえしそうになるような二人の可愛さの本流を味わうことが出来てしまう。ああもうリゼたんかわいい、可愛すぎない?かわいいだが…。
ジークの身もだえはTwitterで毎日見かける限界オタクのそれですし、リゼたんのデレは最早上限を知らないとばかりに毎秒ストップ高を更新していく勢い。それを見て、この二人、かわいいな~~~~!と!思ってしまったが!最後!この作品の虜となることは間違いないでしょう…。逃れられん…。
リゼたん推しの愉快犯な側面もあるものの、実況解説の二人は、常に彼女の可愛さをジークに伝える必要もあります。そも、リーゼロッテが破滅の運命をたどるのは、彼女の理解者が現れず、孤独と化してしまったことも関係しています。彼女の優しい本質が周囲に知れることで、彼女の境遇に変化が生まれれば。ジークが彼女の愛をしっかり受け止め、応えることが出来たなら。
彼女を、定められた破滅の運命から救うことも可能なのではないか。
ハッピーエンドの条件は何よりも「リーゼロッテ」が幸せになること。覆せない筈の運命を押しのけて、きっと幸せな未来に近づいていくキャラクター達の姿を、是非読んで楽しんでもらえたらな~と思います。
以上!
志摩さん、わんこさん、ほしいもありがとうございました…!