「学文純不」 #不純文学 pic.twitter.com/03tWxFfjQa
— 不純文学(10月4日発売) (@impure_stories) September 24, 2019
『不純文学』という物語に、心惹かれる毎日を送っています。
作品について
不純文学は斜線堂有紀(@syasendou)さんのTwitter内で綴られている物語群の総称です。先日選りすぐりの120話を以て書籍化されました。
滅茶苦茶めでたいうえにチョ~~~~~良かったので、そんな不純文学の話をします。この作品、総じてたった一枚/1ページの画像で一つの物語が完結していることが一番の特徴であるのですが、その『密度』が半端じゃない。マジでヤバいくらいに濃い。
例え他の画像と繋がりがあったとしても、必ず不純文学たる作品は一枚の画像の中で生まれ、その中で一つのオチを迎えます。まるで文字数という制約を感じさせない程に仕上がっているというクオリティの高さのまま。そんな、たった600字前後でありながらも果てなく綴られ続けるお話には、一つ、登場人物という共通点があります。
作中メインとなる登場人物は二人。主な語り部であり先輩の後輩である「私」。そして、読書が好きな私の先輩である「先輩」です。性別も、年齢も姿形もすべてが不確かな二人は、それでも基本的に先輩の後輩な「私」であり、私の先輩はそれ故に「先輩」です。人であるかも、生きているかすらも問われません。600字の中で、彼らはありとあらゆる体験をします。
例えばそれはラブロマンスであったり、ホラーであったり、コメディであったり、ミステリーであったり。常識はずれのSFめいた突飛な世界観の中、二人の綴られる日々は非日常でありながら日常という、なにより彼ら二人のたくさんの居場所であります。幸せなようでどこか不幸かもしれない、きっと切ない沢山の居場所。
時に恋をしあい、時に分け合い、時に助け合う。
時に殺し合い、時に憎み合い、時に生き別れる。
あるページではヒーローである先輩は時に恐ろしいほど冷酷で、
あるシーンでは乙女心を覗かせる私はいつかは先輩のことを手に掛けた。
あえて表現するなら先輩と後輩は基本互いを大切に思い合う関係であり、大まかに大学のサークルにおける間柄であるわけですが、まあそんな事は些事です。だってそんな不確定は普通になりえない。
私と先輩はとても不確かな存在でありながら、しかしその何ら共通項を見いだせないような彼らを読者は「私」と「先輩」として認識する。
不思議な話。
内容について
百聞は一見に如かずのコーナー。そんな不純文学、本当に色々な種類のお話があるんですが、大まかに分けるなら
- 1.「私もしくは先輩が何かしらの能力を得て能動的に動く、もしくはそれによって何かが連鎖して起こる」
- 2.「世界/世界観自体に何かしらの変革、また出来事がある」
- 3.「私もしくは先輩に異変が起こり受動的に動く、もしくはそれによって何かが連鎖して起こる」
かな、と勝手に思っています。すべての作品がこんな大雑把なカテゴリに分類できるとかマジで解釈違いのためそれはないですけど、あえて大まかにするならば。そしてどれでもめちゃ面白い。おススメいっぱい。
例えば1のお話なら
「これからいつか殴りにいこうね」 pic.twitter.com/30NOpELVze
— 不純文学(10月4日発売) (@impure_stories) October 2, 2019
「私」の理不尽への代役を果たす「先輩」の「これからいつか殴りに行こうね」や、
「たかが百年のきみ」 pic.twitter.com/OZghl7L7j3
— 不純文学(10月4日発売) (@impure_stories) July 31, 2019
嘘発見器を使った「私」が「先輩」の本心を知ってしまう「たかが百年のきみ」。
2のお話なら
「想定外」 pic.twitter.com/NsK54aJonP
— 不純文学(10月4日発売) (@impure_stories) August 13, 2019
説明書をきちんと読んだ「先輩」が電子レンジで怪物退治をする「想定外」、
「ガチャより無体な宿業もない」 pic.twitter.com/n9AwfkhPPM
— 不純文学(10月4日発売) (@impure_stories) June 16, 2019
巨大ガチャを回す「私」のガチャを回す「先輩」の「ガチャより無体な宿業もない」。
3のお話なら
「デクレッシェンド」 pic.twitter.com/4wrsnT4a7i
— 不純文学(10月4日発売) (@impure_stories) May 24, 2019
幽霊に体を乗っ取られた「私」と「先輩」の「デクレッシェンド」、
「オーバースペック」 pic.twitter.com/9uIysVuaH6
— 不純文学(10月4日発売) (@impure_stories) July 2, 2019
何でもできる「私」にスマブラで勝てない「先輩」の「オーバースペック」など。
他にも数えきれないほどのオススメがあるわけですが、どれもすごい好きなんです。なんとなくチョイスでコイツ程よい恋愛系好きだな?と思われるのはまあ事実そうなので…。ちょっと甘酸っぱかったりするのが好きで、そういう「程よい関係」みたいなものが結構多いんですよこの二人。可愛い。
また、「繋がりがあったとしても~」という話を最初の方にしましたが、全く明記されず、さらっと続編や別視点に当たる作品が存在していたりします。
例えばこの「今から一緒に殴りに行こうよ」は、
「今から一緒に殴りに行こうよ」 pic.twitter.com/ieuRtQAXhV
— 不純文学(10月4日発売) (@impure_stories) April 5, 2019
1の例として挙げた「これから一緒に殴りに行こうね」とリンクした世界観で綴られて、
こっちの「ガチャほど素敵な商売はない」は、
「ガチャほど素敵な商売はない」 pic.twitter.com/92UlKdE52Z
— 不純文学(10月4日発売) (@impure_stories) March 13, 2019
2の例として挙げた「ガチャほど無体な宿業もない」とリンクしています。
下、「注文の多い先輩」「注文の多い私の先輩」は、前者の完全な続編として後者が書かれています。
「注文の多い先輩」 pic.twitter.com/JZm2neZ0dO
— 不純文学(10月4日発売) (@impure_stories) February 19, 2019
「注文の多い私の先輩」 pic.twitter.com/taDgtoYIxz
— 不純文学(10月4日発売) (@impure_stories) May 27, 2019
どれもこれも両方見なくたって一つの作品として楽しめるけれど、こういった発見があるとまた作品の見方が変わったり、感じ方が異なったりして面白い。
また、私が挙げたものは比較的すんなり理解のしやすい類だと思います。本当にどうしてこのオチなのか分からないものは未だ分からないままなくらい、作品ごとに個性も口当たりも違い過ぎるので、私が挙げたものはあくまで偏りの激しい氷山の一角です。
そんな風な深い作品自体の解釈もさることながら、"つながり"という面ですら読者を様々に翻弄してくれる不純文学、罪…。
先日書籍として発売された「不純文学」では、特にこういった比較なんかがしやすくなっていたりなんて利点もありますが、そんなすっとこどっこいは関係なく何よりもこの本は是非にも「紙媒体で読むべき」だと私は思います。
折角普段がデジタルなんだから、紙の質感と共に物語を味わったっていいじゃない。ページごとに切り替わる紙自体の濃さがマジでたまんないし捲る不純文学は人生を豊かにする、そんな気さえする。
まずはこの記事にある作品を読んでもらって、是非アカウントのメディア欄からこの世界の虜になってもらって――そうして、貴方の一番好きな「不純文学」を是非見つけてみて貰えたらな、と思います。
本も買ったらもっとハッピーだと思います。好きなお話、ついったでいいから教えてね!
以上!